旅行に行くときは、本を一冊カバンに入れるのがルーティーン。旅先で読んだ本は、その風景と一緒に、心のどこかに残っている気がします。
静かな宿のベッドで読んだ小説や、列車や飛行機の中でページをめくったエッセイ。
本の内容だけでなく、そのときの空気感や匂いまでも、一緒に思い出せるのが不思議です。
ぼくにとって、旅と本はどちらも「いつもとは違う自分に出会う時間」。
その組み合わせは、ささやかな冒険のようでもあり、ほっと安心できる場所のようでもあります。
旅で読んだ一冊
とくに印象的だったのは、北国を旅したときに読んだエッセイ集でした。
雪の町を歩いたあと、ストーブのある小さなカフェで、温かいココアを飲みながらページをめくった時間。
その本の静かな語り口と、窓の外の雪景色が、まるで寄り添うように重なっていたのを覚えています。
そのあと何度もその本を読み返しましたが、やはり「旅の途中で読んだ」という経験が、何よりも深く記憶に残っています。
旅に持って行くならこんな本

旅に連れていく本を選ぶときは、「読みやすくて、やわらかい余白のあるもの」を選ぶようにしています。
移動中に読み進めやすい文庫本や、旅先の気分に合う短編集はおすすめです。
もちろん、計画通りに読めることばかりではないけれど、バッグの中にお気に入りの一冊があるだけで、待ち時間も退屈せず、行動にゆとりができる気がします。
ふとした時間にページを開いて、そこからまた違う旅が始まる。そんな感覚が、ぼくは好きです。
旅に連れて行きたいおすすめの本5選
ここで、旅を深める本をご紹介します。風景や人と出会う外の旅と、自分の心のなかで起きる内側の旅、どちらも豊かにしてくれる本たちです。どれも
📗『旅をする木』星野道夫
あらすじ:
アラスカの大自然とともに生きた著者が綴る、静かで力強いエッセイ集。風景や動物との出会い、人とのつながり、そして「生きること」へのまなざしが、丁寧な言葉で描かれている。
読書難易度:★★★☆☆
やさしく詩的な文章で、エッセイとして読みやすい。ただ、自然や生と死についての深いテーマが含まれているので、じっくり味わいたくなる一冊。
ロクの感想:
旅の途中、自然の中で読みたくなる一冊。たとえば、列車の窓の外に広がる田園風景を眺めながら、そっとページをめくりたくなる。星野さんの言葉は、心の奥に静かに届いて、何気ない時間に深みをくれる。旅先で「立ち止まる」ことの意味を教えてくれるような本だと思う。
📘『深夜特急』沢木耕太郎
あらすじ:
26歳の著者がインドのデリーからロンドンまで、バスで旅した壮大な紀行。旅の中での出会い、トラブル、感情の揺れなどがリアルに綴られ、読む者の冒険心を掻き立てる。
読書難易度:★★★☆☆
旅のエピソードがリアルでテンポもよく、読みやすい。でも地理や当時の情勢の知識があると、さらに楽しめる。旅慣れていない人にはやや冒険的に感じるかも。
ロクの感想:
これは、空港で読み始めたら、もう旅が始まってしまう本。宿や移動の合間に少しずつ読むと、自分も著者と一緒にバックパックを背負って歩いている気分になる。冒険旅の前に読むと、心の準備運動になるかも。読み終えるころには、自分の旅にも少し勇気が持てる気がする。
📕『佇む人』筒井康隆
あらすじ:
独特の世界観をもつ短編を収録した、ちょっと不思議な読後感のある作品集。「佇む」という静的な行動のなかに潜む、人間の心理や不条理がテーマになっている。
読書難易度:★★★★☆
短編で区切られているけれど、テーマが少し難解だったり、読後に考えさせられることが多い。ユーモアと不条理が混ざっているので、独特の世界観に慣れるまで少し時間がかかるかも。
ロクの感想:
この本は、どこか静かな喫茶店の窓辺で読みたい。観光や移動の合間、少し頭を休めたいときにちょうどいい。物語の余韻が、旅先の空気と混ざって、独特の時間が流れる感じがする。心が落ち着くのに、ちょっとだけ波紋を残してくるのが筒井さんの魅力だなって思う。
📒『国境のない生き方 私をつくった本と旅』ヤマザキマリ
あらすじ:
漫画家ヤマザキマリさんが、自身の旅と読書体験を語るエッセイ。日本、イタリア、中東、さまざまな場所での暮らしを通して感じたこと、本との出会いを綴っている。
読書難易度:★★☆☆☆
対話するようなエッセイでとても読みやすく、内容も軽快。読書や旅の経験が少ない人にも親しみやすい。初めてのエッセイ本にもおすすめ。
ロクの感想:
旅先で出会う価値観の違いや文化のズレを、「面白い」と受け止められるようになる一冊。自分の視点にこだわらず、もっと自由に、しなやかに生きていいんだなと思わせてくれる。カフェでコーヒーを片手に読むと、「ああ、旅ってこういうことかもしれない」と思える本。
📙『つむじ風食堂の夜』吉田篤弘
あらすじ:
どこか懐かしくて不思議な町にある「つむじ風食堂」。その夜ごとに訪れる人々との、静かな出来事が綴られた短編集。
読書難易度:★★★☆☆
柔らかく幻想的な文章で、とても心地よく読めるけれど、明確なストーリーの盛り上がりがあるわけではないので、人によっては「何気なさ」を掴みにくいかも。静かな時間にじっくり読むのが◎。
ロクの感想:
この物語の中の空気がとても好きで、旅先でふと立ち寄った喫茶店のような心地よさがある。ひとつひとつの話が、心にそっと触れてくる感じ。
夜の列車や静かな宿で読みたくなる一冊です。
あとがき

旅の途中で読んだ本を、ふと思い出すことがあります。
たとえば、海辺のベンチで読んだ一節や、夜の灯りの下でうとうとしながら読みかけたページ。
記憶の中の風景には、たいてい本の余韻が重なっていて、それがまた旅をやさしく彩ってくれます。
本と一緒に過ごす時間が、旅をより深く味わわせてくれるような気がして。
だからぼくは、次の旅にもきっと、本を連れていくと思います。
あなたなら、どんな一冊を選びますか?